【対策】貿易取引のリスクとは?5大リスクとリスクマネジメントを解説
貿易取引には、国内取引にはないさまざまなリスクが存在します。
そのため、海外とのビジネスを展開していく上で、これらのリスクを理解し、正しく管理することは必要不可欠です。
とはいえ、輸出入をしたことがない企業や担当者にとって、貿易リスクを把握し、その対策をすることは中々難しいこともありますよね。
そこで今回は、貿易取引における5大リスクに焦点を当て、
- それぞれのリスクが起こる原因
- ビジネスに及ぼす影響
- 貿易取引のリスクマネジメントの方法
について詳しく解説します。
貿易取引に関わる方々が直面するリスクについて理解し、リスクマネジメントを身につけることで、安全な取引へと繋げていきましょう。
目次
国内取引とは異なる貿易取引の特徴
貿易取引には国内取引にはない特徴がいくつかあります。
そもそも、貿易取引では異なる国や地域との取引が行われるため、
- 言語
- 通貨
- 商慣習
- 法制度
などが異なります。
そのため、取引をする場合、異なるルールや手続きに従わなければなりません。
また、貿易取引では輸送距離や物流の要素も大きな違いとなるでしょう。
異なる国との取引では、長距離輸送や国境を越えた通関手続きが必要となり、物流コストや時間が国内取引よりも高くかかることが一般的です。
さらに、貿易取引では国際的なリスクも考慮する必要があります。
- 政治的な不安定性
- 為替変動
- 貿易規制の変更
など、国内取引では直面しないようなトラブルに直面することも。
異なる国や地域との取引において、文化や法制度の違い、物流やリスク管理などへの対応能力が求められるのです。
貿易取引の5大リスクとその対策
最初にお伝えした通り、貿易取引には多くのリスクが存在します。
大きく分けると
- 信用リスク
- 回収リスク
- 輸送リスク
- 為替変動リスク
- カントリーリスク
に分けられ、これらのリスクを「貿易取引の5大リスク」と呼びます。
内容を統合して「3大リスク」とするケースもありますが、細かく分けた方が把握しやすいので、ここから「5大リスク」を一緒にチェックしていきましょう!
リスク①:信用リスク
信用リスクとは、異なる国や地域での取引において、相手企業の信用度が明確に把握しづらいことから生まれます。
国外の企業となると
- 相手企業の財務状況
- 生産力
- ビジネスモラル
などの情報が限定的であり、契約の履行や支払いの遅延、不履行のリスクが存在します。
また、文化や法制度の違いによる言葉の誤解や契約の解釈の相違も信用リスクを引き起こす要因です。
信用リスクを軽減するためには、信頼性の高い取引相手の選択が重要となります。
信用調査や企業の評価、取引実績の確認を通じて、相手企業の信用度を評価することが必要です。
さらに、契約書や条件の明確化、支払い保証や信用保険の活用、国際的な取引ルールや仲裁制度の活用なども有効な対策となるでしょう。
また、相手企業との信頼関係の構築やコミュニケーションの強化も重要です。
相手企業との定期的なコミュニケーションや情報の共有、相互の要求や期待の明確化を通じて、信頼感を築くことで、リスクを最小限に抑えることができます。
適切な信用調査やリスク管理策、相手企業との信頼関係の構築を通じて、信用リスクを軽減し、安定した取引の実現を目指しましょう。
リスク②:回収リスク
貿易取引における回収リスクは、商品の輸送に伴う時間差から生じます。
商品の受け渡しと代金の支払いが異なるタイミングで行われるため、売り手が代金回収のリスクを負う場合と、買い手が商品入手のリスクを負う場合があります。
代金後払いの場合、商品を出荷した後に代金を回収するため、買い手の支払い能力や意思の変化によるデフォルトリスクが懸念されるでしょう。
一方、前払いの場合、買い手が代金を支払った後に商品を入手するため、売り手が商品の出荷や品質に関するリスクを抱えることになります。
回収リスクを軽減するためには、信用状と呼ばれる銀行が代金支払いを保証する方法があります。
※信用状を使ってのリスク回避方法については、この記事の後半で説明します。
さらに、貿易保険に加入することで、回収リスクに備えることも可能です。
貿易保険は売り手が買い手のデフォルトに備える保険であり、万が一の代金未回収に備えてリスクを軽減します。
リスク③:輸送リスク
輸送リスクとは、商品が長距離を移動するために生じるリスクです。
輸送中にはさまざまな事故やトラブルが発生することがあるでしょう。
例えば
- 船舶の遭難や車両の故障
- 天候不良による遅延
- 商品の損傷・破損・紛失
などが考えられます。
また、貿易取引は長距離の輸送となるので、商品の品質が劣化するリスクや、輸送遅延によって納期が守れなくなるリスクも存在します。
これらの輸送リスクは貿易取引において避けることができない要素であり、事前の対策が重要です。
貿易取引における輸送リスクを軽減するためには、貨物保険の利用が一般的です。
貨物保険は商品の輸送中に発生する損害や紛失に対して保障を受けるための保険であり、万が一の事故やトラブルに備えることができます。
貨物保険に加入することで、商品の損害や紛失による経済的な損失を回避し、取引の安定性を確保することができます。
リスク④:為替変動リスク
為替変動リスクとは、取引に使用する通貨の価値が変動することによって生じるリスクのことです。
特に、異なる通貨間での取引が行われる場合、為替レートの変動によって利益や損失が生じる可能性があります。
為替リスクの具体的な例を考えてみましょう。
例えば、日本円とアメリカドルでの取引を行う場合、取引契約時の為替レートが1ドル=100円だったとします。
しかし、輸出商品が準備されるまでに為替市場が変動し、1ドル=90円になってしまった場合、輸出金額は円換算で10%減少してしまいます。
このように、為替リスクは取引の収益やコストに直接影響を与える重要な要素です。
為替リスクを軽減するための一つの対策として、為替予約があります。
為替予約では、将来の取引日の為替レートを予め確定しておくことで、為替リスクを避けることが可能です。
これにより、取引時の為替変動による影響を最小限に抑えることができます。
リスク⑤:カントリーリスク
カントリーリスクとは、相手国の政治的、経済的、社会的な要因によって生じるリスクです。
貿易相手国の内乱、政策変更、貿易制限、通貨制度の変更などが原因で、輸出入や送金が中断される可能性が考えられます。
例えば、相手国で政治的な不安定が起きると、政府が貿易制限や輸出入規制を行うことは珍しくありません。
また、経済的な危機や通貨価値の急激な変動もカントリーリスクの要素となるでしょう。
さらに、社会的な要因としては、労働争議やデモ活動、自然災害などが挙げられます。
カントリーリスクは、貿易取引における安定性と収益予想に大きな影響を与えるでしょう。
そのため、取引相手国がリスクの高い地域に位置している場合、取引の中断や損失を被る可能性があるので注意が必要です。
このようなカントリーリスクに対処するための対策として、貿易保険を活用する方法があります。
貿易保険は、相手国の政治的なリスクや非支払いリスクに備えて、損害を補償する役割を果たします。
また、事前に相手国の政治情勢や経済状況を調査し、リスクを適切に評価することも重要です。
貿易取引におけるリスクマネジメント
貿易取引におけるリスクマネジメントの手法としては
- リスク回避
- リスク低減
- リスク移転
- リスク保有
の4つの考え方が重要となります。
また、リスクマネジメントにおいてはコミュニケーションと協力関係の構築も欠かせません。
取引相手や関係者との適切なコミュニケーションを図り、リスクに関する情報や懸念事項を共有するようにしましょう。
リスクマネジメントとして具体的に
- 信用状取引をする
- 専門業者を利用する
の2つがあるのでここからそれぞれ紹介します。
①信用状取引をする
「信用状取引をする」ことは、貿易取引のリスクマネジメントとして効果的です。
信用状取引(Letter of Credit, L/C)とは、貿易取引において売り手と買い手の間で行われる支払い保証手段の一つです。
具体的な仕組みとしては、買い手が銀行に対して特定の金額を預け、その銀行が売り手に対して支払いを行うことを約束する書類、つまり「信用状」を発行します。
売り手はこの信用状を受け取ることで、買い手の支払い義務が銀行に移ったということを確認できます。
信用状取引には売り手、買い手、発行銀行、受益銀行(売り手の銀行)の4者間での取引が行われます。
売り手は買い手に対し、信用状の発行を要求し、買い手はその発行を銀行に依頼します。
銀行は信用状の内容と条件を確認し、それに基づいて支払いや受取手続きを行います。
信用状取引の利点は、売り手にとっては買い手の支払いリスクを銀行が保証してくれるため、取引の安全性が高まる点です。
一方、買い手にとっては商品の引き渡し条件を満たしてからの支払いとなるため、商品が受け取り条件に合致していることを確認できるメリットがあります。
しかし、信用状取引には手続きや手数料などの費用がかかる上、発行銀行と受益銀行の間でのやり取りに時間がかかることも少なくありません。
また、信用状の条件や文書の解釈に誤解が生じる場合もあります。
そのため、正確な文書作成や条件の明確化、信頼できる銀行との取引が重要です。
信用状取引は国際貿易における一般的な支払い手段の一つであり、売り手と買い手の双方の利益と安全性を確保するための重要な手段となっています。
②専門業者を利用する
もう1つ、リスクマネジメントとして有効なのが「専門業者を利用する」こと。
貿易取引に不安を抱えていたり、自社に輸出入業務を行うリソースがないのであれば、輸出入を専門とする業者に依頼をするのもいいでしょう。
直接取引をするよりもコストが高くなる可能性もありますが、専門業者は貿易取引に関する知識も豊富なので、リスクを回避し、安心して貨物を発送することができます。
輸出入代行ドットコムでも貿易取引の代行をリーズナブルな価格で行っているので、ぜひお気軽にご相談ください。
リスクを理解して安全な貿易取引をしよう
貿易取引は国内取引と違ったリスクがたくさんあります。
また、言語や商習慣の違いから表面化しにくいリスクもあるので、気付かぬうちに損失となってしまうことも。
とはいえ、リスクをきちんと理解することで、回避する対策を立てることもできるようになります。
利益とリスクのバランスを見ながら、適切な対策をとり、安全な貿易取引を目指しましょう。