IATA(国際航空運送協会)とは?役割やICAOの違いなどを徹底解説
航空貨物を取り扱ったことのある人の中には「IATA」という言葉を聞いたことがある人もいると思います。
IATAは、スムーズかつ安心・安全な航空輸送をするために今や欠かせない存在です。
とはいえ、IATAが果たす役割やIATAとICAOの違いなどについて、詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか?
そこで今回は
- IATAの基本的な概要
- IATAの役割
- ICAOとの違い
などを徹底解説します。
IATAについて気になっている人や、航空輸送に携わっている人はぜひ最後まで読んでください。
目次
IATA(国際航空運送協会)とは?
IATA(イアタ)は国際航空運送協会(International Air Transport Association)の略称です。
IATAは航空業界の団体で、安全な航空輸送を第一に乗客の利便性を支えるグローバルな団体です。
1945年に設立され、本部はカナダのモントリオール、スイスのジュネーブにあります。
IATAはスケジュール便および非スケジュール便を含む約290の航空会社が加盟しており、その数は総航空交通量の82%となります。
IATAが設立した経緯
IATAは1945年4月にキューバのハバナで設立されました。
当初、IATAはInternational Air Traffic Association(1919年に設立された団体)から引き継いだ31か国・57社の航空会社で構成されていました。
IATAの設立は第二次世界大戦後、航空輸送が急速に発展し、民間航空が軍事目的の飛行機から一般庶民向けの交通手段として注目されるようになったものの「チケットが高すぎる」という問題を解決することを目的としていました。
そこで1940年代後半、IATAは価格調整の国際会議を開催し始めました。
この会議は数百の決議が可決され、統一的なタリフの細目が確定されるなど、航空業界における国際的な基準設定のきっかけとなりました。
また当時、航空会社の大半は国営であり、IATAには価格統制の機能(カルテル)が期待されました。
最初の運送会議は1947年にリオデジャネイロで開催され、航空券販売競争を抑制する価格統制の役割が確立されました。
IATAの歴史を振り返ると、航空業界における価格調整やサービスの規制などの役割がありました。
一方で、消費者の立場からは価格統制による制約やサービスの質向上への影響が議論されたことも少なくありません。
現在のIATAは航空業界においてリーダーシップを発揮し、航空輸送の安全性、効率性、持続可能性の向上を促進しています。
IATAの主な4つの役割
IATAの主な役割は以下の4つとなります。
- 空港コードの共通化
- 航空輸送における危険物規定書の策定
- 航空運賃の決定
- 国際線運航スケジュールの策定
それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
①空港コードの共通化
IATAは、国際的な航空業界の標準化を促進するため、空港コードの統一を行っています。
これにより、異なる航空会社や予約システム、航空交通管制などの関係者が同じコードを使用することで、迅速かつ正確な情報交換が可能になります。
空港コードは、航空業界において異なる空港を一意に識別するために使用されるコードであり、一般的には3文字のアルファベットで表されます。
例えば、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港は「JFK」、東京の成田国際空港は「NRT」などです。
旅客や航空関係者はコードを使用して特定の空港を簡単かつ正確に識別することができ、円滑な航空旅行の実現に寄与しています。
②航空輸送における危険物規定書の策定
IATAは航空輸送における安全性の確保を重視しており、危険物(Dangerous Goods)と呼ばれる航空輸送において特別な取り扱いが必要な貨物について、規制やガイドラインを策定しています。
危険物には、
- 可燃性物質
- 腐食性物質
- 爆発物
- 毒物
- 放射性物質
などが含まれます。
そしてIATAの危険物規制(Dangerous Goods Regulations)は、
- 航空輸送における危険物の分類
- 包装・マーキング・ラベリングの基準
- 取り扱い手順
- 航空会社への通知
など、様々な側面をカバーしています。
これは、航空輸送において危険物を適切に取り扱うための指針となっています。
また、IATAは航空業界の利害関係者に対して危険物の取り扱いに関する教育・訓練プログラムも提供しています。
航空会社、貨物代理店、荷主などが適切な知識と技能を身につけ、危険物の取り扱いに関する規制を遵守することが可能です。
IATAの危険物規制は国際基準として広く受け入れられており、航空業界全体で統一された取り扱いが行われています。
これにより、貨物の安全性が確保され、航空機や関連する施設、乗客、乗員、地上の人々へのリスクが最小限に抑えられます。
③航空運賃の決定
IATAは航空運賃の策定において重要な役割を果たしています。
航空運賃は航空業界において航空券の価格や旅客貨物の運賃に関する料金体系のことです。
これには様々な要素が含まれ、航空会社が提供するサービスや航空路線、需要と供給のバランスなどが考慮されます。
IATAの「航空運賃の策定」は以下の4つの活動を含んでいます。
①タリフの策定
IATAは航空運賃のタリフ(料金体系)を策定し、航空会社に提案します。
タリフには航空券の価格、旅程の制約、クラス分け、割引制度などが含まれます。
IATAが提案したタリフは航空会社が参考にしながら、自社の運賃体系を決定する際の基準となります。
②運賃調整
IATAは航空運賃の調整を行い、需要と供給のバランスを保つために適切な価格設定をサポートします。
これにより、航空会社は需要予測や市場動向を考慮しながら適正な運賃を設定することが可能です。
③レート制度の確立
IATAは異なる航空会社間の航空運賃の統一や調整を促進するために、レート制度を確立しています。
レート制度は航空会社間での価格調整や収益配分の基準を提供し、競争の公平性を確保します。
④競争政策への対応
IATAは競争政策の変化に対応しながら、航空運賃の策定において公正な競争環境を促進する役割も果たしています。
航空会社は競争政策や規制に従いながら、適切な価格設定を行わなければなりません。
IATAの航空運賃の策定は、航空会社の収益性や競争力の向上、顧客の需要に合わせた価格設定などを考慮しながら行われます。
また、IATAは航空業界の利害関係者と協力し、航空運賃に関するデータや情報の提供、市場分析、予測などもしています。
航空運賃の策定は航空業界において重要な経済活動であり、需要と供給のバランスを取りながら持続可能な航空サービスの提供を目指すために欠かせない要素です。
IATAは航空運賃の策定において業界全体の調和と公正な競争環境を促進する役割を果たしています。
④国際線運航スケジュールの策定
IATAは、乗客や貨物の輸送を効率的かつ円滑に行うために「運航スケジュールの策定」をしています。
加盟国の多かったヨーロッパのサマータイムを基準に、航空会社間のスケジュール調整をし、航空輸送の効率性の最大化を図ります。
IATAは航空会社や関連する利害関係者と協力し、運航スケジュールの最適化と航空輸送の効率向上を目指しています。
IATAとICAOの違い
IATAとよく混同されがちなのが「ICAO」
ICAO(国際民間航空機関)とは、航空業界における国際的な規制・基準策定機関です。
国際連合の専門機関のひとつであり、政府間の協力に基づいて運営される国際機関で、1944年に設立されました。
ICAOの主な目的は、航空安全性の確保、航空交通の効率化、環境保護などを含む国際航空秩序の促進です。
ICAOは、航空業界の規制策定や標準化、航空交通管制の推進、航空安全の向上などを担当しています。
ICAOは航空業界の規制策定と国際航空秩序の推進に焦点を当てており、IATAは航空会社の利益調整や業界標準の確立に重点を置いています。
IATAには公認代理店制度がある
IATAの公認代理店とは、航空券の販売や予約、旅行関連サービスの提供などを専門とする、IATAによって公認された旅行代理店や航空会社の代理店を指します。
公認代理店は、IATAの基準や要件を満たし、IATAの認定を受けた正規の業者ということです。
また、貨物輸送に関しては、IATA公認貨物代理店という制度があり、航空貨物のB/Lを自社で発行する場合、IATA公認貨物代理店の資格が必要となっています。
IATAにはディプロマ認定制度がある
IATAには、航空業界の専門知識とスキルを習得し、業界内でのキャリア発展や職業訓練を目指す人々に対して、IATAが提供する教育プログラムの認証を行う「ディプロマ認定制度」があります。
国際航空貨物の運送状(AWB)や輸送スケジュールの作成などを習得する「基礎コース」とIATA危険物規則書や危険品の梱包などを学ぶ「危険物コース」の2種類に分かれており、危険物コースの資格は2年ごとに更新をしなければなりません。
試験内容は多くの国で同じ問題が使われており、試験も英語で行われるため、日本国外でも通用する資格の1つです。
IATAは安心安全な航空輸送の実現に不可欠な存在である
IATAは安心安全な航空輸送を目的とした団体です。
- 空港コードの共通化
- 航空輸送における危険物規定書の策定
- 航空運賃の決定
- 国際線運航スケジュールの策定
のみならず、ディプロマ認定制度があったり、安全な航空輸送のために幅広く活動しています。
航空業界においてリーダーシップを発揮しているIATAに、今後も注目していきましょう。